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東京高等裁判所 平成9年(行ケ)41号 判決 1998年9月08日

京都府京都市南区上鳥羽南塔ノ本町12番地

原告

株式会社南部電機製作所

代表者代表取締役

南部邦男

訴訟代理大弁理士

高田武志

東京都千代田区霞が関三丁目4番3号

被告

特許庁長官 伊佐山建志

指定代理人

千葉成就

浜勇

井上雅夫

廣田米男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  原告が求める裁判

「特許庁が平成7年審判第4853号事件について平成9年1月17日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

第2  原告の主張

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和62年5月16日に考案の名称を「果実、野菜等の等級分類装置」とする考案について実用新案登録出願(昭和62年実用新案登録願第73334号)をし、平成3年5月13日にこれを特許出願(平成3年特許願第138514号。後に発明の名称を「果実、野菜等の等階級分類装置」と補正。以下「本願発明」という。)に変更したが、平成7年2月8日に拒絶査定を受けたので、同年3月9日に拒絶査定不服の審判を請求し、平成7年審判第4853号事件として審理された結果、平成9年1月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受け、同年2月19日にその謄本の送達を受けた。

2  本願発明の特許請求の範囲の請求項1(別紙図面A参照)

多数の受け皿を直列にエンドレスに連結してなる選別コンベアと、選別コンベアの走行領域の上流側に配されており、走行される選別コンベアの各受け皿に果実、野菜等を供給する供給手段と、この供給手段により供給された各受け皿の果実、野菜等の階級を検出する階級検出手段と、果実、野菜等が供給された受け皿の走行領域であって、作業者の目視による各受け皿の果実、野菜等に対する等級判定がなされる領域で、当該作業者により手動設定可能となるように各受け皿に設けられており、各受け皿に供給された果実、野菜等の目視による等級判定結果を変位により当該各受け皿毎に手動設定するための目視可能であって変位自在な可動部を有した等級設定手段と、この各受け皿の等級設定手段の目視可能な可動部の変位により設定された等級判定結果を、目視による等級判定がなされる領域よりも下流側で検出する等級検出手段と、階級検出手段の階級検出結果及び等級検出手段の等級検出結果に基づいて各受け皿に供給された果実、野菜等を等階級毎に集合させる集合手段とを具備しており、等級設定手段は、手動設定された等級判定結果を目視確認することができる機構を具備しており、手動設定後から集合手段を通過するまでは、手動設定された等級判定結果が保持されるようになっている果実、野菜等の等階級分類装置

3  審決の理由

別紙審決書「理由」写しのとおり

4  審決の取消事由

審決は、一致点の認定及び相違点の判断を誤った結果、本願発明の進歩性を否定したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)一致点の認定の誤り

a 審決は、引用例1記載の発明において選果人による果実等の等級の選別は選果人の目視による等級の判定を意味するしたうえで、本願発明と引用例1記載の発明は果実等の等級判定を目視によって行う点において一致する旨認定している。

しかしながら、引用例1には果実等の等級の選別が選果人の目視によって行われる旨の記載は全くないから、審決の上記認定は根拠がない。

この点について、被告は、果実等は機械による等階級判定が困難であって、形状や色艶を目視によって判定するのが最も簡便であるから、引用例1記載の選別機においても等級判定は目視によて行われていると考えられる旨主張する。

しかしながら、例えば昭和62年特許出願公開第44660号公報に記載されているように、西瓜の熟度等の判定を叩いたときの音によって簡便に行う方法もあるから、果実等の等級判定は目視によるのが判定が最も簡便であるとはいえない。

b 審決は、引用例1には果実等を自動的に等級別階級別に選別排出する装置(第2図の108)が記載されているとして、本願発明と引用例1記載の発明は果実等を等階級毎に集合させる集合手段を具備する点で一致する旨認定している。

しかしながら、引用例1には、別紙図面Bに図示されている108が果実等を自動的に等階級別に選別排出する装置であることを示す記載はないから、審決の上記認定も根拠がない。

この点について、被告は、引用例1記載の選別機は果実類の等階級の選別が自動的に行われ、等階級別に選別排出するものであるから、別紙図面B第2図に図示されている108の部材が果実等を等階級ごとに集合させる手段であるとみることに不合理はない旨主張する。

しかしながら、引用例1には108の部材が果実等を等階級ごとに集合させる手段であることは示唆すらされておらず、被告の上記主張は特許法29条1項3号の文理に反するものである。

(2)相違点の判断の誤り

a 相違点1について

審決は、受け皿上の被測定物に関する選別情報を受け皿自体に設定する技術的思想は引用例2あるいは引用例3に記載されている旨説示している。

しかしながら、引用例2には、受け皿に3つの溝凹部を形成しておき、球状農作物のうち秀のものは溝凹部(2)、優のものは溝凹部(3)、良のものは溝凹部(4)に載置することが記載されているのみであって、引用例2記載のどの構成が、等級判定結果を手動設定する等級設定手段であるのか、審決は全く明らかにしていない。また、引用例3には、被選別物を収容するパンの底面に記録媒体を設けることが記載されているが、本願発明の要件である受け皿は直列かつエンドレスに連結されてコンベアを形成するものであって、個別に分離できる状態でコンベアに載置されている引用例3記載のパンとは技術的意義を異にするものである。したがって、引用例2あるいは3を論拠として、相違点1に係る本願発明の構成は想到容易であったとする審決の判断は誤りである。

この点について、被告は、引用例2記載の選別方法において農作物を所定の溝部に載置することは判定結果を手動により設定していることにほかならない旨主張する。

しかしながら、「設定」とは制御手段にパラメータを与えることであるから、被告の上記主張は制御対象と制御手段とを混同するものであって、失当である。

また、被告は、引用例3記載のパンが被選別物を収納する容器という意味で本願発明の要件である受け皿と共通することは明らかである旨主張する。

しかしながら、被告の上記主張は、本願発明の要件である受け皿が被選別物を収納する容器であると同時に選別コンベアを形成する点を全く捨象するものであって、不当である。

b 相違点3の判断の誤り

審決は、手動設定された等級判定結果をリセットする位置をどこにするかは設計上の事項である旨説示している。

しかしながら、本願発明は、相違点3に係る構成によって、等級判定結果が手動設定されてから集合手段を通過するまで保持されるため、作業者あるいは第三者が手動設定された等級判定結果の当否を再確認できる利点を持つものであるから、これを単なる設計事項とする審決の判断は誤りである。

この点について、被告は、引用例1の「後詰めの選果人は表示板により判定済みか否かを識別して等級判定を行う」(2頁右上欄16行、17行)との記載を援用して、当初の等級判定結果が保持されている間にその当否を再確認することは本願発明に特有の事項ではない旨主張する。

しかしながら、この記載は、下流の選果人は上流の選果人が等級判定をしなかった物についてのみ等級判定を行うという意味であるから、被告の上記主張も失当である。

c 作用効果の看過

審決は、本願発明により得られる作用効果は引用例1ないし3あるいは周知技術から予測される以上のものとは認められない旨説示している。

しかしながら、本願発明によれば、コンベアが受け皿の連結によって形成されているため、受け皿を滑り変位なしに高速で搬送することができるとともに、等級判定結果が各受け皿ごとに設定されているため、被選別物と等級判定結果との間に走行同期ずれが生ずることがなく、分類を正確かつ迅速に行うことができるとの作用効果を得ることができる。このように顕著な作用効果は、本出願前の技術では予測できなかったものである。

第3  被告の主張

原告の主張1ないし3は認めるが、4(審決の取消事由)は争う。審決の認定判断は、正当であって、これを取り消すべき理由はない。

1  一致点の認定について

(1)原告は、引用例1には果実等の等級の選別が選果人の目視によって行われる旨の記載はないから、本願発明と引用例1記載の発明は果実等の等級判定を目視によって行う点において一致するとした審決の認定は根拠がない旨主張する。

しかしながら、果実等の等階級判定は機械では困難であって、形状や色艶を人が目視して判定するのが最も簡便であるうえ、引用例1には「梨、りんご等の(中略)果実は選果人が1個毎に等級判定をなし受皿に投入する」(2頁右上欄5行、6行)、「水瓜等の重量物は(中略)選果人により等級判定を行い」(2頁右上欄14行、15行)と記載されている。したがって、引用例1記載の選別機においても等級判定は目視で行われていると考えられるから、原告の上記主張は失当である。

(2)また、原告は、引用例1には別紙図面Bに図示されている108が果実等を等階級別に選別排出する装置であることを示す記載はないから、本願発明と引用例1記載の発明は果実等を等階級毎に集合させる集合手段を具備する点で一致するとした審決の認定は誤りである旨主張する。

しかしながら、引用例1記載の選別機は果実そ菜類の「等級別階級別の選別が自動的に行われる事を特徴と」(1頁右下欄6行、7行)しぐ「果実を(中略)等級別、階級別に選別排出する」(2頁左上欄18行)ものであるから、別紙図面B第2図の左端に図示されている108の部材が果実等を等階級ごとに集合させる手段であるとみることに何ら不合理はない。

2  相違点の判断について

(1)相違点1について

原告は、審決は引用例2記載のどの構成が等級判定結果を手動設定する等級設定手段であるのか明らかにしていない旨主張する。

引用例2記載の等級及び階級選別方法は、人が球状農作物の等級を判定して所定の溝部に載置すると、光電管装置がどの溝部に農作物が載置されているかを検知して信号を発し、その信号に基づいて選別が自動的に行われるものである。すなわち、農作物を所定の溝部に載置することは、目視による判定結果を手動により設定していることにほかならないから、引用例2に「受け皿上の被測定物に関する選別情報を受け皿自体に設定するような技術的思想」が記載されているとした審決の認定に誤りはない。

また、原告は、本願発明の要件である受け皿はコンベアを形成するものであるから、コンベアに載置されている引用例3記載のパンとは技術的意義を異にする旨主張する。

しかしながら、引用例3記載のパンが、被選別物を収納する容器という意味で本願発明の要件である受け皿と共通することは明らかであり、引用例3記載の発明ではその容器自体に被収納物に関する情報が設定されるのであるから、引用例3記載の技術内容に関する審決の認定にも誤りはない。

(2)相違点3について

原告は、本願発明は相違点3に係る構成によって作業者あるいは第三者が手動設定された等級判定結果の当否を再確認できる利点を持つのであるから、これを単なる設計事項とする審決の判断は誤りである旨主張する。

しかしながら、引用例1にも「後詰めの選果人は表示板により判定ずみか否かを識別して等級判定を行う」(2頁右上欄16行、17行)と記載されているように、当初の等級判定結果が保持されている間にその当否を再確認することは、本願発明に特有の技術ではない。そして、当初の等級判定結果の当否を再確認する機会を多くするためには等級判定結果のリセットをできるだけ下流にすればよいことは当然であるが、同時に、被選別物の等階級ごとの集合が終了した後まで等級判定結果を保持しておくことは不合理であるから、相違点3に係る本願発明の構成は当業者ならば容易に想到できたとする審決の判断に誤りはない。

(3)本願発明の作用効果について

原告は、本願発明によれば受け皿を滑り変位なしに高速で搬送することができるとともに、被選別物と等級判定結果との間に走行同期ずれが生ずることがなく、分類を正確かつ迅速に行うことができるとの作用効果を得られる旨主張するが、そのような作用効果は本願発明に特有のものではない。

理由

第1  原告の主張1(特許庁における手続の経緯)、2(本願発明の特許請求の範囲)及び3(審決の理由)は、被告も認めるところである。

第2  甲第3号証(特許願書添付の明細書)、第6号証(平成7年4月7日付手続補正書。以下「手続補正書イ」という。)及び第7号証(平成8年1月19日付手続補正書。以下「手読補正書ロ」という。)によれば、本願発明の概要は次のとおりである(別紙図面A参照)。

(1)技術的課題(目的)

本願発明は、果実又は野菜等を等階級に選別する等階級分類装置に関するものである(手続補正書イ3頁1行)。

果実等の重量及び大きさ等の階級の検出は、比較的容易である。しかし、果実等の品質は、外観形状や色艶等の等級に大きく関わるので、等級選別のために、例えば画像処理技術によるものやカラーセンサーによる検出等が実用化されている(手続補正書イ3頁9行ないし15行)。

しかしながら、従来の選別装置は、外観形状や表面の状態等の数値化できない要素の判定を自動に頼るために、選別結果は満足のいくものでないうえ、装置が高価となるので小規模な処理装置においては実用性に乏しい(明細書2頁5行ないし8行)。

したがって、数値化されない要素の判定は人の目視による方が望ましいが(明細書2頁10行、11行)、単列のコンベアから手作業で複数のコンベアに振り分けをしなければならない欠点がある(明細書2頁18行ないし20行)。

本願発明の目的は、従来技術の上記のような問題点を解決することである。

(2)構成

上記の目的を達成するため、本願発明は、その特許請求の範囲記載の構成を採用したものである(手続補正書ロ1頁21行ないし2頁7行)。

(3)作用効果

本願発明によれば、

a  果実等の外観形状等の数値化が困難な要素の判定を目視によって行うため、低コストで小規模な処理装置にも適する装置を得ることができる、

b  搬送中に果実等を1つのコンベアから他のコンベアヘ振り分ける必要がないため、コンベアの本数を減らすことができるとともに、振分けによる果実等の品質の劣化を防ぐことができる、

c  コンベアが多数の受け皿の連結によって形成されているため、受け皿を滑り変位なしに高速で搬送できる、

d  等級判定結果が各受け皿ごとに設定されるため、被選別物と等級判定結果との間に走行同期ずれを生ずることがなく、各受け皿に載置された果実等の等級検出を確実かつ迅速に行うことができる、

e  集合手段を通過するまでは設定された等級判定結果が保持されているため、作業者あるいは第三者が設定されている判定結果の当否を再確認することができる

との作用効果を得ることが可能となる(手続補正書ロ4頁21行ないし5頁24行)。

第3  そこで、原告主張の審決取消事由の当否について検討する。

1  一致点の認定について

(1)原告は、引用1には果実等の等級の選別が選果人の目視によって行われる旨の記載は全くないから、本願発明と引用例1記載の発明は果実等の等級判定を目視によって行う点において一致するとした審決の認定は根拠がない旨主張する。

検討すると、前掲甲第3号証によれば、本願明細書に「作業者の目視検査による従来の選別装置」(2頁18行)と記載されているように、果実等の外観形状や色艶等の判定は人の目視によって行われるのが最も普通であることはいうまでもない。そして、甲第8号証によれば、引用例1には「梨、りんご等の(中略)果実は選果人が1個毎に等級判定をなし受皿に投入する」(2頁右上欄5行、6行)、「水瓜等の重量物は(中略)選果人により等級判定を行い」(2頁右上欄14行、15行)と記載されていることが認められるが、上記の事実に照らせば、引用例1記載の等級判定も人の目視によって行われているとみるのは当然のことである。

この点について、原告は、西瓜を叩いたときの音によって熟度等の判定を行う方法もある旨主張するが、そのような判定方法は西瓜等の特定の果実にのみ適用できる方法であるから、原告の上記主張は採用することができない。

(2)また、原告は、引用例1には別紙図面Bに図示されている108が果実等を等階級別に選別排出する装置であることを示す記載はないから、本願発明と引用例1記載の発明は果実等を等階級毎に集合させる集合手段を具備する点で一致するとした審決の認定は誤りである旨主張する。

検討すると、前掲甲第8号証によれば、引用例1には「第1図は従来公知の3条型の標準の選果施設を示すもので(中略)、6は形状又は重量による測定器で受皿の通過毎に中の果実の階級(S、M、L、2L等)が判定され所定の位置で受皿が傾斜して果実を受箱8に階級別に排出する。」(2頁左下欄2行ないし11行)と記載されていることが認められる。この記載によれば、別紙図面B第1図の6(測定器)の下流に記載されている7の部材が、果実等を階級別に選別し排出する作用を行うことは明らかである。そして、引用例1記載の発明は、上記従来技術を改良したものであって、「等級別階級別の選別が自動的に行われる事を特徴とする」(1頁右下欄6行、7行)のであるから、その実施例を示す別紙図面B第2図の106(光線式形状測定器)及び107(演算機)の下流に図示されている108の部材が第1図の7の部材に相当するものであり、果実等を自動的に等階級別に選別し排出する作用を行っているとみることには、何らの疑問もない。

(3)以上のとおり、一致点に係る審決の認定に誤りはない。

2  相違点の判断について

(1)相違点1について

原告は、審決は引用例2記載のどの構成が等級判定結果を手動設定する等級設定手段であるのか明らかにしていない旨主張する。

検討すると、甲第9号証によれば、引用例2には、「球状農作物(19)は等級格付工程部(9)に於いて人手により「秀」のものは受皿(2)の溝凹部(3)、「優」のものは同溝凹部(4)、「良」のものは同溝凹部(5)に位置させられることにより区分されるのである。次いで夫々の受皿(2)の該当溝凹部(3)(4)(5)の何れかに載置された球状農作物(19)はコンベア(1)により等級判別工程部(10)に移行されここに於いて受皿(2)の溝凹部(3)に載置されている球状農作物は光電管装置(6)(6)を遮断することになりこの場合は当該球状農作物の品質は「秀」である旨の信号が、又受皿(2)の溝凹部(4)に載置された球状農作物は光電管(6)(6)、(7)(7)共に影響はなくこの場合は「優」としての信号が、更に受皿(2)の溝凹部(5)に載置された球状農作物は光電管(7)(7)を遮断し、この場合「良」の信号が夫々コンピューター(14)に向け発せられ、コンピューター(14)はこれらの信号を等級判別信号(15)として記憶するのである。」(5頁右上欄15行ないし右下欄3行)と記載されていることが認められる(別紙図面C参照)。

この記載によれば、引用例2記載の選別方法においては、農作物の等級は人によって「秀」・「優」・「良」のいずれかに判定され、その判定結果は受皿に設けられている3本の溝凹部のいずれかに当該農作物を載置することによって記録されることが明らかであって、この記録が光電管装置によって読み取られ、コンピューターに記憶されるのである。したがって、引用例2記載の選別方法において農作物を受皿に設けられている3本の溝凹部のいずれかに載置することは、本願発明の要件である等級判定結果を各受け皿ごとに手動で設定する構成と技術的には何ら差異がない。果実等の等級判定結果を、受皿に設けられている3本の溝凹部のいずれかに当該果実等を載置することによって記録するか、「各受け皿に設けられて」いる「変位自在な可動部」により記録するかは、下流の記録読取装置(引用例2記載の光電管装置、本願発明の要件である等級検出手段)にとって技術的に重要ではなく、単なる設計事項にすぎないというべきである。

また、原告は、引用例3にコンベア上のパン自体に被選別物に関する情報を記録することが記載されていることを認めながら、本願発明の要件である受け皿は連結してコンベアを形成するものであるから、コンベアに載置されているパンとは技術的意義を異にする旨主張する

しかしながら、審決が、被選別物を収納する容器自体に被選別物に関する情報を記録することが公知であったことを示すために引用例3を援用していることは明らかであって、その容器が連結してコンベアを形成しているか否かは、上記の点とは何の関わりもないことであるから、原告の上記主張は失当である。

以上のとおりであるから、相違点1に係る審決の判断に誤りはない。

(2)相違点3について

原告は、相違点3に係る本願発明の構成は手動設定された等級判定結果の当否を作業者自身あるいは第三者が再確認できる利点を持つから、単なる設計事項ではない旨主張する。

検討すると、引用例1には「水瓜等の重量物は当初受皿に投入し搬送中選果人により等級判定を行い、同時に該当表示板を押込み、後詰めの選果人は表示板により判定ずみか否かを識別して等級判定を行うため(中略)高能率の選果が可能である。」(2頁右上欄14行ないし19行)と記載されていることが認められる。この記載によれば、引用例1記載の選別機には複数の選果人が予定されており、等級判定は原則として上流の選果人が行うが、必要ならば下流の選果人も等級判定を行うものと考えられる。もっとも、そのような二重の等級判定が何故「水瓜等の重量物」についてのみ予定されているのか判然としないし、下流の選果人の等級判定は原告主張のように上流の選果人が等級判定をしなかった物についてのみ行われると解する余地もないではないが、少なくとも、引用例1には、等級判定結果を相当時間保持することにより等級判定結果の当否を再確認する機会を持つようにして高能率の選果を図ることが示唆されているといえる。そして、被選別物の等階級ごとの集合が終了した後まで等級判定結果を保持しておくことは意味がないから、相違点3に係る本願発明の構成は当業者ならば容易に想到できたとする審決の判断に誤りはない(念のため付言すれば、本願発明の特許請求の範囲には、集合手段を通過するまで保持されている等級判定結果を何人かが再確認することが記載されているわけではない。)。

(3)  本願発明の作用効果について

原告は、本願発明によれば受け皿を滑り変位なしに高速で搬送することができるとともに、被選別物と等級判定結果との間に走行同期ずれが生ずることがなく、分類を正確かっ迅速に行うことができるとの作用効果を得られる旨主張する。

原告主張の第1の作用効果は、本願発明の要件であるコンベアが受け皿の連結によって形成されているために得られるものであるが、コンベア上に載置される受け皿を滑り変位なしに高速で搬送するためには、受け皿の連結によってコンベアを形成する複雑な方法以外に、より簡便な方法が多々考えられるから、上記第1の作用効果を本願発明に特有のものとする理由はない。

また、原告主張の第2の作用効果は、果実等の等級判定結果が当該果実等を載置する各受け皿ごとに設定されているために得られるものであるが、そのような構成は前記のように引用例3に記載されているから、第2の作用効果も 本願発明に特有のものとする理由はない。

(4)  以上のように、相違点に係る審決の判断にも誤りはない。

第4  以上のとおりであるから、本願発明の進歩性を否定した審決の認定判断は、正当であって、審決には原告主張のような違法はない。

よって、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は、失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成10年8月25日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 春日民雄 裁判官 宍戸充)

別紙図面A

<省略>

1 選別コンベア

3 受け皿

5 目視部

7 判定指示ダイヤル

9 検出部

10 第一の集合部

11 第二の集合部

別紙図面B

<省略>

1・・・受皿 101・・・コンベア

2・・・等級選別区間 102・・・受皿

3・・・秀級用コンベア 103・・・エンドレスチェーン

4・・・優級用コンベア 104・・・手動押込式表示器

5・・・良級用コンベア 105・・・マイクロスイッチ

6・・・測定器 106・・・光線式形状測定器

8・・・受箱 107・・・演算機

別紙図面C

<省略>

(1)は球状農作物搬送コンペア

(2)は球状農作物受皿

(3)(4)(5)は溝凹部

(6)(6')は光電管装置

(7)(7')は元電管装置

(8)は球状農作物供給工程部

(9)は等級協付工程部

(10)は等級判別工程部

(11)は形状判別工程部

(12)は重量判別工程部

(13)は選別工程部

(14)はコンピュークー

(15)は等級判別信号

(16)は形状判別信号

(17)は重量判別信号

(18)は等級階級選別信号

(19)は球状農作物

理由

本願は、昭和62年5月16日付けで出願された実用新案登録出願(実願昭62-73334号)から平成3年5月13日に適法に出願変更された特許出願であって、その発明の要旨は、平成6年10月11日付け、平成7年4月7日付けおよび平成8年1月19日付けの手続補正書により補正された明細書および図而の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、

「多数の受け皿を直列にエンドレスに連結してなる選別コンベアと、選別コンベアの走行領域の上流側に配されており、走行される選別コンベアの各受け皿に果実、野菜等を供給する供給手段と、この供給手段により供給された各受け皿の果実、野菜等の階級を検出する階級検出手段と、果実、野菜等が供給された受け皿の走行領域であって、作業者の目視による各受け皿の果実、野菜等に対する等級判定がなされる領域で、当該作業者により手動設定可能となるように各受け皿に設けられており、各受け皿に供給された果実、野菜等の目視による等級判定結果を変位により当該各受け皿毎に手動設定するための目視可能であって変位自在な可動部を有した等級設定手段と、この各受け皿の等級設定手段の目視可能な可動部の変位により設定された等級判定結果を、目視による等級判定がなされる領域よりも下流側で検出する等級検出手段と、階級検出手段の階級検出結果及び等級検出手段の等級検出結果に基づいて各受け皿に供給された果実、野菜等を等階級毎に集合させる集合手段とを具備しており、等級設定手段は、手動設定された等級判定結果を目視確認することができる機構を具備しており、手動設定後から集合手段を通過するまでは、手動設定された等級判定結果が保持されるようになっている果実、野菜等の等階級分類装置。」にあるものと認める。

これに対して、当審における拒絶理由に引用された特開昭56-28683号公報(以下、これを「引用例1」という。)には、「果実そ菜等の被測定物を収容する受皿を一定間隔に選別コンベア上に多数装着し測定位置に設置した光線式形状測定器又は重量測定器により搬送される被測定物を測定し階級選別を行う果実そ菜等の選別機において、・・・(中略)・・・選果人が被測定物の等級を判定し受皿に投入する都度該当表示器を押せば一条の選果コンベアにて等級別階級別の選別が自動的に行われることを特徴とする果実そ菜等の選別機」(公報の特許請求の範囲に記載)が記載されている。

そして、前記選別コンベアについては同公報第2頁左下欄第2行から第4行および同左下欄第18行から右下欄第1行め記載からみて、エンドレスコンベアとして構成されており、前記選果人による等級の選別はこの種の一般的技術からみて選果人の目視による等級の判定を意味していると解することができる。

また、前記記載によると、選果人が被測定物の等級を判定し受皿に投入する都度該当表示器を押込むことになっているが、この投入場所は選別コンベアの走行領域の上流側において行われるのが普通のことであり、さらに、重量物は当初受皿に投入し搬送中選果人により等級判定を行い、同時に該当表示板(表示板は表示器の単なる誤記と認められる。)を押込み、後詰めの選果人は表示板(上記と同様)により判定ずみか否かを識別して等級判定を行う(同第2頁右上欄第14行から第17行に記載)という記載を考え合わせると、投入場所は等級の判定を行う区間と同じであることも、その最も上流側から被測定物の投人がなされその下流側に等級の判定を行う区間が設けられていることも示されており、いずれにしても被測定物を受皿に投入する投入場所は選別コンベアの走行領域の上流側において行われているものであり、また、前記押込式表示器は、第3図に記載されているように赤、青、白の如く色別に表示せる押ボタンを等級数一組として受皿102に対応して構成されたものである(同第2頁右下欄第3行から第6行参照)とともに、前記のように後詰めの選果人は表示器により判定ずみか否かを識別していることからみて、前記押込式表示器は、選果人の等級判定結果を押ボタンを押込むことにより手動設定されてその状態を目視で区別でき、また、その等級判定結果を目視確認することができる仕組みとなっていることになる。

また、前記マイクロスイッチについても、その機能としての等級の判定を行う区間において等級判定を行い表示器を押込むことにより手動設定された表示器からその等級判定結果を検出することおよび図面の記載を考え合わせると、前記マイクロスイッチ105は等級の判定を行う区間よりも後にあるものであり、その結果手動設定された表示器はマイクロスイッチ105を通過した後おいて元の位置に機械的にリセットされるものである(同第2頁右下欄第6行から第11行目参照)。

さらに、同第2頁右下欄第12行から第3頁左上欄第9行および図面の記載から、光線式形状測定器106又は重量測定器からの測定結果とマイクロスイッチ105からの等級判定結果に基づいて、自動的に等級別階級別に選別排出する装置(第2図の符号108に対応)が配置されていることも示されているものである。

とすると、これらの記載および図面の記載内容からみて、引用例1には、本願発明に照らして表現すると、「多数の受皿を直列に装着したエンドレスの選別コンベアと、選別コンベアの走行領域の上流側に配されており、走行される選別コンベアの各受皿に果実そ菜類である被測定物を投入する選果人と、この選果人により投入された各受皿の被測定物の階級を検出する光線式形状測定器又は重量測定器106と、被測定物が投人された受皿の走行領域であって、選果人の目視による各受皿の被測定物に対する等級判定がなされる等級の判定を行う区間で、選果人により手動設定可能となるように選別コンベアの等級の判定を行う区間の一側に併列して同一速度で走行するエンドレスチェーンに選別コンベアの受皿一個毎に対応して設けられており、選果人の目視による被測定物の等級判定結果を、選果人が被測定物を判定し受皿に投入する都度或いは当初受皿に投入し搬送中選果人により等級判定を行うと同時に、押込みにより各受皿毎に手動設定するための目視で区別できるようにした押ボタンを等級数一組とする押込式表示器104と、押込式表示器104の目視で区別できる押ボタンの変位により設定された等級判定結果を、目視による等級判定がなされる区間の後で検出するマイクロスイッチ105と、光線式形状測定器106又は重量測定器から測定結果とマイクロスイッチ105からの等級判定結果に基づいて、果実そ菜類を自動的に等級別階級別に選別排出する装置108を具備し、押込式表示器104は、手動設定された等級判定結果を目視確認することができる仕組みとなっており、手動設定後からマイクロスイッチ105を通過してから後にリセットされるようになっている果実そ菜類の選別機。」が記載されている。

また、同じく引用された特開昭54-54849号公報(以下、これを「引用例2」という。)には、その記載内容からみて、球状農作物の等級及び階級選別方法について、搬送コンベアに附設された受皿(2)に溝凹部(3)(4)(5)を形成し、それぞれの溝凹部を各等級に対応させて、目視による等級判定結果を受皿の溝の上に農作物を位置させて、その農作物の等級を設定するようなことが、同じく特公昭59-5029号公報(以下、これを「引用例3」という。)には、果実、野菜等の選別において、選別物搬送コンベヤ上の受皿に相当するパン自体に記録媒体を設け、測定装置によって被選別物の重量又は大きさを測定して、この計測結果に基づく選別段階を記録媒体に記録させるようなことが記載されている。

そこで、本願発明と前記引用例1に記載されたものとを比較すると、本願発明の「受け皿を直列にエンドレスに連結してなる選別コンベア」、「果実、野菜等」、「階級検出手段」、「作業者」、「等級判定がなされる領域」、「等級設定手段」、「可動部」、「領域よりも下流側で検出する等級検出手段」、「等階級毎に集合させる集合手段」および「等階級分類装置」は、その記載内容からみて、引用例1に記載された「受皿を直列に装着したエンドレスの選別コンベア」、「果実そ菜類」或いは「被測定物」、「光線式形状測定器又は重量測定器106」、「選果人」、「等級の判定を行う区間」、「押込式表示器104」、「押ボタン」、「区間の後で検出するマイクロスイッチ105」、「等級別階級別に選別排出する装置108」および「選別機」に対応し、また、引用例1に記載されたものは、選果人が被測定物を投入すなわち受皿に供給するが、選果人による被測定物の供給であっても供給手段の範ちゅうに入るものと解されるから、

両者は、「多数の受け皿を直列にエンドレスに連結してなる選別コンベアと、選別コンベアの走行領域の上流側に配ざれており、走行される選別コンベアの各受け皿に果実、野菜等を供給する供給手段と、この供給手段により供給された各受け皿の果実、野菜等の階級を検出する階級検出手段と、果実、野菜等が供給された受け皿の走行領域であって、作業者の目視による各受け皿の果実、野菜等に対する等級判定がなされる領域で、当該作業者により手動設定可能となるように、果実、野菜等の目視による等級判定結果を変位により当該各受け皿毎に手動設定するための目視可能であって変位自在な可動部を有した等級設定手段と、この各受け皿の等級設定手段の目視可能な可動部の変位により設定された等級判定結果を、目視による等級判定がなされる領域よりも下流側で検出する等級検出手段と、階級検出手段の階級検出結果及び等級検出手段の等級検出結果に基づいて各受け皿に供給された果実、野菜等を等階級毎に集合させる集合手段とを具備しており、等級設定手段は、手動設定された等級判定結果を目視確認することができる機構を具備している果実、野菜等の等階級分類装置。」である点で一致しており、以下の点で両者は相違している。

相違点1

等級設定手段(押込式表示器104)について、本願発明が「各受け皿に設けられ」ているのに対して、引用例1に記載されたものは「選別コンベアの等級を判定を行う区間の一側に併列して同一速度で走行するエンドレスチェーンに選別コンベアの受皿一個毎に対応して設けられ」ているものである点

相違点2

目視による等級判定を行うのは、本願発明が「各受け皿に供給された果実、野菜等」であるのに対して、引用例1に記載されたものは「果実、野菜等(被測定物)を受皿に投入する都度或いは当初受皿に投入し搬送中」言い換えると「受皿に供給される前の果実、野菜等(被測定物)或いは重量物は各受け皿に供給された果実、野菜等(被測定物)」である点

相違点3

等級設定手段(押込式表示器104)について、本願発明は「手動設定後から集合手段を通過するまでは、手動設定された等級判定結果が保持されるようになっている」のに対して、引用例1に記載されたものは「手動設定後等級検出手段(マイクロスイッチ105)を通過してから後にリセットされるようになっている」点

そこで、前記各相違点について順次検討すると、相違点1について、

この相違点は、等級設定手段が、引用例1に記載されたものは本願発明のように受け皿に設けられていない点にある。

しかしながら、変位自在な可動部を有したものではないけれども、本願発明と同様な技術分野において、溝凹部や記録媒体を用いたものではあるけれども、受け皿上の被測定物に関する選別情報を受け皿自体に設定するような技術的思想が前記引用例2或いは引用例3に記載されているように従来から知られている。

しかも、果実、野菜等の等階級分類装置における搬送するための受皿ではないけれども、一般の被搬送物を搬送する搬送体自体に被搬送物に関する情報のための各種の設定手段を設けるようなことも、前記拒絶理由に従来周知の技術の例として挙げたようによく知られていることである(実公昭50-8388号公報、特開昭47-44680号公報、実願昭50-60673号(実開昭51-140967号)のマイクロフィルム、実願昭51-70733号(実開昭52-160975号)のマイクロフィルム)。

とすると、引用例1に記載されたような等級設定手段を選別コンベアの選別を行う区間の一側に併列して同一速度で走行するエンドレスチェーンに選別コンベアの受皿一個毎に対応して設ける、すなわち、等級設定手段を受け皿に別体に設ける代わりに、前記引用例2或いは引用例3に記載されたような受け皿上の被測定物に関する選別情報を受け皿自体に設定するような技術的思想或いは前記従来周知の技術を応用して、相違点1のように構成するようなことは当業者が容易に想到し得たものであり、前記相違点1は格別なことではないものである。

相違点2について

引用例1に記載されたものは、選果人が被測定物の等級を判定し受皿に投入する都度該当表示器を押込むことになっており、等級判定は受け皿に供給される前の果実、野菜等(被測定物)に対して行われることになるが、しかし、さらに、重量物の場合は、当初受皿に投入し搬送中選果人により等級判定を行うようにされていることからみて、すべての場合ではないが本願発明と同様に各受け皿に供給された果実、野菜等に対して行われる場合があることを示しており、この点について両者は同じである。また、果実、野菜等を目視により判定するとき、受け皿に供給する際に行うか或いは受け皿上で行うかは必要に応じ採用し得る程度のものでありいずれにしても相違点2は格別のことではないものである。

相違点3について

引用例1に記載された等級設定手段(押込式表示器104)は、手動設定後等級検出手段(マイクロスイッチ105)を通過してかち後にリセットされるようになっている。これは、自動的に選別させるには等級検出手段に等級判定結果を検出させる必要があり、そのためには、等級設定手段は等級検出手段の位置より前で手動設定され、等級検出手段の位置より後にリセットされる必要があるためであると解することができる。

そして、リセットすることの意味からみて、このリセットは等級検出手段を通過してから再び手動設定が行われるまでの間に行われればよく、このリセットする位置をその間のどこにするかは当業者が必要に応じて採用し得る設計上の事項であり、また、引用例1に記載された等級設定手段もリセットされるまでは手動設定した状態が保持されそれが目視可能であることは明らかなことである。

とすると、受け皿に等級設定手段を設けるようなことは相違点1について判断したように格別のことではないものであり、その際に、その等級設定手段の手動設定状態を等級検出手段を通過した後から再び等級判定結果を手動設定するまでの間でリセットするようなことは前記のとおりであり、特にその位置を集合手段を通過するまでリセットしないでそのままの状態すなわち手動設定された等級判定結果が保持されたままの状態として前記相違点3のように構成するようなことも当業者が必要に応じて容易に想到し得たものと認めざるをえない。

以上のとおり、前記各相違点は格別なことではなく、等級設定手段を受け皿と別体に設けたような引用例1に記載されたものに、前記引用例2或いは引用例3に記載された技術的思想または前記従来周知の技術を応用して本願発明のように構成するようなことは当業者が容易に推考できたものと認められる。

そして、そのように構成したことによる作用効果も、前記引用例1に記載されたもの、引用例2~3に記載された技術的思想、前記従来周知の技術が奏する作川効果から予測される以上のものとも認められない。

したがって、本願発明は、前記引用例1に記載されたもの、前記引用例2或いは引用例3に記載された技術的思想、前記従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

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